「臨終師フォン」創作メモ

長編小説「臨終師フォン」を出版しました。よろしくお願いします。出版までの過程をメモとして残して、みなさんのお役に立てればと思います。

ゼロからイチの幻想2  組み合わせの発想法

前エントリー「ゼロからイチの幻想」 の具体的な方法論です。

組み合わせの発想法は、次の三段階になると思います。MBAではお馴染みのロジカルシンキング、そのMECEの考え方からきています。 ただし、これは新規事業、新商品、新機能などに向けた、時間をかけて考える方法です。ちょっとしたアイデアなどには向いてませんが、応用はできます。私は慣れているので、著作にもこの技術を多く使います。

  1. 組み合わせの元を得る(入力ソース)
  2. 目的に沿って、元から組み合わせを考える
  3. 組み合わせを評価し、選択する

第一段階は情報の収集であり、日常的な作業です。組み合わせの元を持っている人ほど有利になりますので、普段から広い範囲の知識や情報を持っていることが大事になります。組み合わせの元が多いほど、多くの組み合わせを作ることができます。発想法という技法はいろいろとありますが、まずはこの元を持っていることが重要です。小説、映画、ノンフィクション、演劇、音楽、論文、エッセイ、散歩、旅行、実体験などなど、普段から知識や情報に接する機会を多くすることです。他人と同じ入力ソースしかないのであれば、それだけ他人と同じような発想しか出来ないので、多様で良質な入力ソースが必要になります。またチームで行う時は、年齢や性別や経験の多様性があった方が、広い発想が生まれることになります。

第二段階は、組み合わせを考えることです。この時に、目的がはっきりしていないと単に発散したアイデアの塊になってしまうので、目的をはっきりと言語語化しておくことは重要です。(大体において、解が納得できないのは設問が間違っているのです)  まずはランダムに組み合わせてみるという方法はあります。手軽な方法は、多くのカードに言葉を書いて、その中から2、3枚を選んで、数秒で目的の内容(新規事業、新商品、新機能、ストーリなどなど)を考えてみることです。発想の瞬発力つける訓練になります。カードには、流行のモノ、手持ちのモノ(既存の技術や事業など)、その他には地名や形容詞などを書いておきます。これでは発散してしまいますが、ブレインストーミングの始めとしてはかなり有効です。これを一日中、一週間ぐらい続けることはよくありましたが、頭の使いすぎでだんだんと目眩がしてきます。この段階は、ある程度発散させて、数を出すことが重要になってきます。

第三段階は、第二段階のリストを評価することです。評価項目としては、例えば新規事業ならば事業規模、事業成長性、投資規模、競合の強さ、技術的な優位性などでマトリックスを作って評価をします。縦軸に第二段階で作ったリスト、横軸に評価項目として評価表を作り、評価点の合計で考えてみます。評価項目の重みを変えたりして表をみると、求めるものの本質が見えてきます。大規模な時は縦軸に数千のリスト、横軸に十ほどの評価項目として、数万以上の評価をした経験があります。これはかなり大変な作業ですが、結果にはそれだけの価値がありました。

これは、ビジネスだけではなく物語作りにも応用できます。拙著「臨終師フォン」 でも、執筆時に随所にこの考え方を使って展開を決めています。例えば、ある章の「香港からどのような方法で移動すべきか、なぜ行き先が深圳なのか」という問題に、飛行機、鉄道、グライダー、バス、船、自動車などなど多くの項目を出して、それぞれを評価して決定しました。このシーンは平凡であると同時に意外な移動手段を使っていて、好きな場面です。具体的には拙著をご覧ください。

また、作品中でも実際に登場人物に使わせています。0x09章でレイラはバンブーウォールからの脱出方法を、ロジカルシンキングMECEによって数秒で決めるシーンがあります。これは、レイラがネオヒューマンだからできることであり、我々マンカインドでは一瞬で決めるのは不可能でしょう。とはいえ、ネオヒューマンもマンカインドも遺伝子的には同一なので、訓練次第では似たような論理的な思考ができるでしょう。例えば、旅行先を決めるのになんとなくで決めるのではなく、金額、観光、宿、気候、グルメ、ショッピング、移動距離などで評価基準を作って考える習慣をつけることです。